Towards Zero
『リオウ、わかってんだろ?時間はそうないぜ』
「・・・・ああ」
『分ってんならいい、じゃあな』
<ユージーン>
どうやらリオウはマジで一族を裏切る気らしい。
“ リオウを見張れ、裏切ったときは始末しろ”
それが俺の任務だ、奴を殺れるとしたら俺くらいだろう。
あいつとは昔からの付き合いだ、付き合いといっても物心つく前から一族にいて、暗殺者としての訓練に共に生き残ったというだけだが、どんな過酷な訓練・任務が終わったあとにも俺の横に立っていたのがあいつだった。
もちろん手合わせをしたことは何度もある、“訓練”が目的の擬剣での立会いが多いが・・・・他の奴との訓練よりは退屈じゃねえが急所を狙っても寸止めじゃダンスみたいなもんだ。
・・・あいつが一族を捨てる、“あの”リオウがなりふり構わず欲しい物を見つけた。
本気になったリオウと命の取り合い・・・か。
・・・いや、あいつは依頼人を知りたがっている、『口を割らせる』目的があれば手加減するかもしれない・・・吐かなければなぶり殺しもありそうだ・・・。
『それよりはスパーッと命の取り合いをしたほうが面白そうだ』
この“任務”が終わったとき、立っていられるのはどっちだろう?
<リオウ>
『仕方ねえ、今日は退散するさ』
あのあとすぐ王宮に戻った、部屋に戻り窓の外を確認すると『夜半・神殿裏で待つ』との合図が確認できた、・・・ジーンの奴、ほんとうに“今日だけ”引いたらしい。
“一族との決別”・・・生易しいものではないことは分かっている、『時間はそうないぜ』とジーンは言った、僕の抹殺命令が出ていると見ていいだろう。
まだ一族と全面戦争をするには早い、せめてカイン様が即位すれば・権力を握れば姫の身を守る力になるだろうが、その前に依頼人を何とかしないと・・・。
処刑人がジーンなら返り討ちも容易ではない、その上依頼人の名を吐かせるとなると・・・だがやるしかない、姫を守るために。
ジーンとは昔から一緒だった。
『俺、そんな退屈な仕事はイヤだね』
等と言い出した上に“退屈じゃ無えやり方”を実行する困った奴だが、実力・機転は申し分なく仕事の一端を任せることに不安は無かった。
多分、今夜会えばどちらかが命を落とすことになるだろう
「・・・・運命か」
王宮への潜入任務がジーンにならなかったのはあの気まぐれな性格を懸念してのことだろう、もし、ジーンが潜入していたら僕がジーンを始末する立場になったのか・・・・だが、潜入任務に選ばれたのは僕で、僕は姫を選んだ。
「全ては今夜」
それは“終わりの始まり”にすぎない・・・